よくわからないところ（「距離」の算出法）

ここは、私自身でも、いまいち理解しきれていないところで、『聖書の暗号』付録の論文を読んでいることが前提です。いちいち、記号を説明せずに、用いていきますからご了解を。

数学記号は、本を見ていないとたぶんわからないと思います。

pp.286-288: 語のあいだの距離

まず、

与えられた配列における２つのＥＬＳｅ・ｅ’間の距離: δ（ｅ，ｅ’）＝ｆ²＋ｆ'²＋ｌ²

ここまでは別に問題なさそう。

ただ、距離を求めるのに２乗を使うのは良いが、
そのまま使い続け、平方根に戻さないため、

δ（ｅ，ｅ’）の逆数μ（ｅ，ｅ’）
は、接近したＥＬＳは比較的大きいのに対し、離れていると、非常に小さくなり、両者の差がきわめて大きくなります。

そして、

あらゆる配列における配置（ｅ，ｅ’）の最大「近接度」の合理的な測度: 　　　　　　　１０　　　　　　　　　１０; σ（ｅ，ｅ’）＝Σμｈｉ（ｅ，ｅ’）＋Σμｈ’ｉ（ｅ，ｅ’）; 　　　　　　　ｉ＝１　　　　　　　　ｉ＝１

ここでは、いろいろ並べ替えて、そのうちの「最短距離」を求めているのではなく、
１０並べ替えた際の総合的な近接度を求めようとしています。ここらへんまでは、考え方の差かもしれません。

しかし、「１０」という数字が選ばれた理由が全くわかりませんし、そもそもこうした制限をもうける理由がわかりません。

スキップｄを１から１０で割り、最も近い整数を取る、
のですが、スキップが非常に大きい場合、１０よりも大きい数で除した結果、接近したＥＬＳが得られることも考えられるでしょう。

上述したように、「距離」は２乗したまま、「平方根に戻さない」のですから、接近したＥＬＳは計算値に大きな影響を与えます。

１０までで打ちきってしまった場合は、離れている、と判定されるかもしれません。

すぐ述べるように、リップスらの方法は大きなスキップを排除していく（不自然な）方法ですが、７文字の文字列のように「創世記」全体で１つくらいしかＥＬＳが見出せないような場合は、それですら大きなスキップの文字列を使わざるをえません。

また、スキップが非常に小さいときは、割った結果同じ数字が出てきます。
スキップが１０であれば、１から１０で割った商に一番近い整数は、
10, 5, 3, 3, 2, 2, 1, 1, 1, 1
となって同じ行長の円筒配列がいくつか現われます。あまり、意味がなさそう。

10よりも小さいスキップであれば、この傾向はいっそう激しくなるし、スキップ４以下だと、円筒配列の行の長さがゼロになってしまうケースが出てくるように読めますが、どうするのか？　記述がありません----まぁ、行長１とするのでしょうが。

さらに、

ｅの最小領域Ｔｅ: ｅを含み、なおかつ｜ｄ＾｜＜｜ｄ｜を満たす他のいかなるＥＬＳｅ＾＝（ｎ＾，ｄ＾，ｋ＾）も含まないＧの最大線分

？？内部に、同一の文字列のＥＬＳを含むＥＬＳは用いない、ということらしいのですが、「含まない」の意味が「小さいｅ＾の一部分でもかかっていたらだめなのか、全部含まれていなければ良いのか」どちらか、いまいちわかりません（「そのｅが最小である領域」とでも訳した方がわかりやすい）。「Ｔｅがｅを含む」というのは「完全に含む」ことを言っているようですし、ｅとｅ＾が離れている場合、「Ｔｅがｅ＾を含まない」とは、Ｔｅはｅ＾には一部でもかかっていない、ことはほぼ明らかです。この２つの「含む」「含まない」には一貫性がありますから、ｅとｅ＾が離れていない場合でもｅ＾がｅに一字でも引っ掛かっていたら、Ｔｅは計算されない、ということに文面上はなりそうなのですが、少し厳しすぎやしないか；そこまで大きなスキップの文字列は冷遇されてしまうのか、とちょっと納得しにくいところであります。

しかし、そもそも、こうして大きなスキップを排除していく理由がさっぱりわからないのです。

・・・・Ｍ・・・Ｍ・Ｍ・Ｒ・・・・・という文字列で・・・・・・・・Ｍ・Ｍ・Ｒ・・・・・は良く・・・・Ｍ・・・Ｍ・・・Ｒ・・・・・はダメ、というのはなぜか？

ＭＭＲとＣＣＢという文字列が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ＭＣ・・・Ｃ・Ｃ・Ｂ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Ｍ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Ｍ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Ｒ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
のように並んでいたとすると、
大きなスキップの方が、「近接」しているのは明らかだと思えるのですが。

なんのために、こんな変な定義にしていくのか、謎です。
ともかく、ここ以降、ドロズニンの本で現われるような、長いスキップの短い文字列は、ほとんど計算には使用されなくなるので、私たちが「等距離文字列」という言葉から受けるイメージとは少し外れてきます。

(98/04/06追加)長いスキップを排除するとどうなるか、例を挙げました。

以下、

ｅおよびｅ’の同時最小領域: Ｔｅ∩Ｔｅ’（ここいらは理解するのに時間がかかりました(^^;)）
λ（ｅ，ｅ’）: Ｔｅ∩Ｔｅ’の長さ
λ（Ｇ）: Ｇの長さ
重さ: ω（ｅ，ｅ’）＝λ（ｅ，ｅ’）／λ（Ｇ）
２語ｗ，ｗ’間の近接度の測度: Ω（ｗ，ｗ’）＝Σω（ｅ，ｅ’）σ（ｅ，ｅ’）

と続いていきますが、不自然なところは他にもあります。

ただ、実際のテキストでの各量がどれくらいか全くわからず、これ以降の計算にどのように影響を与えているのか、良くわかりません。

以上

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