ドロズニンの解釈ですが、まずヘブライ文字の綴りについてや文法に、相当のごまかしがあります。
彼が見いだしたとする、ヘブライ語の文や句には、文法的な誤りが多数含まれています。たとえば、ケネディ弟の暗殺を示すとされる暗号表49で「第二の支配者は殺されるであろう」となっていますが、「第二の支配者」＄ＮＹ ）ＤＮ は語順が逆です（ついでに冠詞があるべきでしょう。----なお、「支配者」は「主、主人」であって少し意味がずれますし、「殺されるであろう」ＹＭＴは、「死ぬであろう」以外には普通訳せないと思います。そもそも、大統領でもないケネディ弟が「第２の支配者」にあたる、という解釈が、完全なこじつけです。）
綴りについても同様です。ヘブライ文字は子音中心で母音はあまり表わしません----だから、暗号的な解釈をいろいろ展開できるのですが----。その母音の表記法は、聖書ヘブライ語の表記、母音記号を別に用いるため母音文字をあまり用いない表記、母音記号を使わず母音文字を多用する表記、の３種類があるのですが、ドロズニンは「都合の良い」ものをその都度、使い分けています。こうすれば、一つの外国語の転写に何通りでも候補ができて、文字列を見出しやすくなります。
外国語の転写には、他にもおかしな所がたくさんあります。たとえば、「シューメーカー・レビー」（彗星の名）の「シューメーカー」の綴りとして、＄ＷＭＫＲとしていますが（暗号表12,13）、文字Ｋは語中語末では（たいてい）摩擦音化するので、この人名を写すのにはふさわしくありません。現代ヘブライ語では、外国語の /k/ は文字Ｑで写します。
＄ＷＭＫＲという綴りだと「シューマッハー」と読む方が自然です（もっともこの場合は、”Ｋ”ではなく文字”Ｘ”を使うのですが）。暗号表12では「木星」をＨ-ＣＤＱとしていますが、この単語をこの意味には普通は使わないでしょう。Ｈ-ＣＤＱの基本的な意味は「正義」です。したがって、暗号表12は、「シューマッハーは正義とぶつかるであろう」として、97年Ｆ１最終戦で、ミハエル・シューマッハーが明らかに故意にヴィルヌーヴの車にぶつけたことを予言している、と解釈すべきではないでしょうか。
文法的におかしい点を除いても。使われる語彙について、まだ疑問点があります。たとえば、月名は原則的にユダヤ暦の月名を使っているのに、暗号表79-81だけは西暦の"July"を使っています。
その他、そもそも解釈が苦しい、こじつけとしか思えない所は山のようにあるのですが、本を見ればわかるだろうから略します。
パソコン通信を見ていたら、ドロズニンがヘブライ語やヘブライ文字の説明をほとんどしていないことについて、
読者を枝葉末節の煩雑さに引きずり込んではいけない、という配慮かもしれない、という驚くべき意見に出会いました。もちろんそんなことはなく、自らの恣意的なヘブライ文字・ヘブライ語の操作を悟られないように「配慮」したため、と見るべきでしょう。